<067> 小学校受験の本番で底力を発揮できる子と、できない子

毎日勉強を教えていると、やる気がある日だけではなく、全くやる気のない日がありますよね。幼児はピュアなので、成人と比べると気分の上昇と下降が著しいです。サッカーなどで激しく運動した後の勉強では、心身ともに疲れているので、10を聞いても5~7くらいしか頭に入りません。また、脳の興奮が収まっていないので、じっくりと考えることもできません。運動だけではなく、親に叱られた直後も、脳が興奮しているので、同じように集中できないでしょう。これ以外にも原因が明らかではなく、何だかよく解らないけれど、調子が乗らない日もあるのです。

お子さんの調子が乗らない日はどうしていますか?

私なら、「今日は調子が悪い日だねぇ~」と思いながら、淡々と勉強を進めます。

「何やってんのよ!」
「グズグズしないで!」
「以前は○秒で出来たのに、今日の結果は何よ!」
「もっと、シャキッとしなさい!」
「何度同じことを言わせるの!」

私はこのようなことは言いません。調子が悪い日は叱責しても、誉め称えても、悪いものは悪いのです。息子も1巡目では、冴えに冴えて、たった1秒で解けた問題が、2巡目では1分以上掛かることも珍しくはありません。私はいつもと変わらずに接しますが、調子が乗らないときに解くのはしんどそうだなと思う問題は飛ばしたります。無理に進行させて、勉強がつまらないものだと思わせるよりも、このくらいの気配りも必要でしょう。

オトナだって、上司にきつく叱責された日は、家に帰っても凹んでいますよね。独身の時も、失恋した日は凹みます。誰が何と慰めようと、また、励まそうとダメなものはダメなのです。このようなときには、気持ちが静まるまで放っておくに限ります。オトナは一大事の時に心が乱されますが、幼児は一大事ではなくても、ピカーと冴え渡っている日や、ドローンとしている日があるのです。

入試当日にドローンとしていたら大変ですよね。ところが幼児でも、それなりに弁(わきま)えていますので、調子が悪くても、悪いなりに最大限の実力を発揮します。

私は毎年大阪で3日間の夏期講習を行っています。最終日の最終コーナーは、15分間で練習した「大きなかぶ」の演劇発表です。岡山(1時間)や名古屋(1時間)、金沢(2時間)などから、大阪の夏期講習へ通ってくるお子さんがいますが、遠距離なので教室へ辿り着くだけでヘトヘトです。劇の練習中も、なかなか気合いが入らずにヘロヘロ状態でいても、保護者が居並ぶ前での本番の上演では、練習から指導していた私自身が驚くくらいにシャキーンとして、ピリッとした発声や演技をするのです。

幼児だからと侮(あなど)れません。どんなにしんどくても、その場の状況を弁えた上での行動が出来るのです。

ただ、これだけは言えると思います。幼児が調子が悪いときに、責め続けると、幼児はサジを投げ出して拒絶モードに入ります。これは、きっと悪い癖になるでしょう。本番でも底力を発揮することはありません。なぜなら、底力を発揮するのは、その努力を認めてもらいたい人がいるからです。その人のためだけに最大限の努力をするのです。調子が悪い度に責め続けるような親なら、幼児は、いざ本番の時でも、期待に応えてあげようとは思わないでしょう。幼児は、信じていてくれる人だけに応える生き物なのです。

※過去記事の再掲載です(情報は古いです)

エスポワール らくらくさん