絵のない話

読み聞かせの大切さは、皆さん心得ておいでと思います。毎日絵本を読んで聞かせている親御さんも多いでしょう。お子さんとお母さまにとって、心安らぐ幸せなひと時であると思います。

さて、私は母に絵本を読んでもらった記憶がほとんどありません。母は父の自営業を手伝っていましたので、ゆっくり本を開く時間があまりなかったのでしょう。いつも私に絵本を読んでくれるのは2歳年上の兄でした。しかしながら、母から聞いた物語はたくさんあります。なぜなら母は絵本ではなく、いつも素話でたくさんのお話をしてくれたのです。佐渡島生まれの母の話は、日蓮上人の話や、安寿と厨子王、地域に伝わる伝説、有名な日本の昔話、祖父や祖母が母の子どもの時にしてくれた話など、面白い話、悲しい話、不思議な話など、レパートリーは豊富でした。今、振り返って不思議に思うのは、絵本で見た物語の挿絵をよく覚えているのと同じように、素話で聞いた話もまるで絵を見たかのように映像として記憶に残っていることです。

母はお話をする時に、周りの風景や主人公の身なりなどを細かく描写できるように話してくれたのでしょう。そして、私はその話を聞きながら頭の中に絵を描き自分だけの絵本を作っていたのです。 本屋さんに行くと、同じお話でもいろんな種類の絵があり買う時に迷ってしまいますね。時には、絵本ではなく素話でお子さんにお話をしてあげましょう。お話のイメージがひとつの絵のイメージに固まってしまうのはとても残念なことです。自由な発想で自由に想像できるようになったら、お話がますます楽しくなると思います。大人になった時に、自分だけの絵本を広げることができるなんて幸せだと思いませんか? ちなみに、母は私を寝かしつける為にたくさんの話をしてくれましたが、ほとんど最後まで聞けた私は、相当寝つきが悪かったのでしょう。母の話が面白く興奮して寝られなかったとも考えられます。

(エスポワール理事長:ウォーカー和子)


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