<013> 小学校受験には絵画の課題画があるので絵日記の習慣は必要

エスポワールでは毎回、絵日記の宿題があります。

年少さんはイチゴやブドウなど、気に入った果物などの絵が多いです。月齢を重ねると女の子は女の子の絵、男の子は大好きなバスや電車を描き始めます。年中さんになると家族でお出掛けをしたときの絵が圧倒的に多くなり、年長さんではお出掛けだけでなく、感動したことや、日常生活を表現できるようになります。絵日記なので文章も付きます。年少さんや年中さんはまだ字を書くことができないので親が代筆しますが、新年長さんになったら自分で書かせています。

毎週毎週、絵日記を見続けていると、子供たちが何に感動し、どのような影響を受けているのかが判るようになりました。

基本的に幼児の記憶はすぐに消えてしまいます。我が家の息子は4歳ですが、3歳の出来事はキレイさっぱりに消え失せています。一緒に出かけたときのビデオを見せても覚えていません。何処へ行ったのか、また、誰と行ったのかも忘れています。教室で年中さんになった子供に年少の時のエピソードを話題にしても「えっ、そうだったの?知らな~い!」と覚えていません。年長さんに年中のときの出来事を話すと、少しは覚えています。しかし、大人の記憶に比べて、子供の記憶は忘れやすいようです。

さて、話はエスポワールの子供たちの絵日記に戻りますが、子供たちと絵日記の出来事について話すと、心に強く残る想い出と、あまり残らないものがあることに気づきました。教室で先生に出来事を5W1Hで詳細に説明できるほど強く記憶に残っているようです。

この夏も絵日記を見ると多くの子供たちが海やプールに出かけました。海外ではハワイ、プーケット、グァム、サイパンなど。国内では九十九里、伊豆、湘南、沖縄、石垣島などなど。でも、幼児には近くや遠くの違いや価値観などは持ち合わせていないので、想い出は「ハワイで“泳いだ”」「湘南で“泳いだ”」そして「楽しかった」という感想になります。大人にとっては行く場所はとても大きな問題であっても、子供には“海”は“海”で“プール”は何処へ行っても“プール”でしかないようです。これらの記憶は結構速く消えてなくなります。

ディズニーランドも子供にとっては天国です。目をキラキラさせて楽しんでいるに違いありません。「ミッキーが可愛かった」「握手してもらった」「パレードが素敵だった」などがありますが、これも後に残るのは「ディズニーランドに行って“楽しかった”」という記憶です。何が楽しかったのかは忘れてしまったけれど「なんだか楽しかった」というおぼろげな記憶は残ります。

それでは、子供たちの絵日記を通して、私自身が感じた記憶に残りやすいもの、言い換えると感動の強いものを紹介します。

一つめは、潮干狩りです。絵日記への出現頻度はとても高いです。エスポワールは東京にあるので、潮干狩りのメッカである千葉県木更津市には行きやすいからなのでしょう。記憶に残る理由は、単に眺めるのではなく主体的な行動を伴うからだと思います。イチゴ狩りもブドウ狩りも記憶に残りやすいとは思いますが、お味噌汁やボンゴレに入っている貝が海の砂の中から出てくるインパクトは大きなものがあります。潮干狩りのことは翌年になっても鮮明に覚えている子供は多いです。ディズニーランドの絵日記にはミッキーやミニーはいても、一緒に出かけた家族はあまり登場しません。しかし、潮干狩りには家族が揃って登場しているのを見かけます。

次に、何故か毎年、年長さんの1つのクラスに一人か二人が絵日記に描いてくる「田植え」があります。実家が農家というわけではなく、体験イベントに参加しているようです。素足でのヌルヌルの感触、匂い、そこから見渡す眺めなど、潮干狩りのように主体性があり、その上で五感の刺激が伴うことによって記憶に強く残るようです。自分が手にしている稲苗が大きく育って、そしてご飯となって口へと入ることが、想像するだけでも摩訶不思議であり、感動につながっているのでしょう。

家庭菜園も記憶に残ります。ナスやトマト、キュウリが育てやすいので目立っています。私自身もナスとトマトとイチゴを育てていたのを今でも覚えています。愛情を込めて、手間暇掛けて育てたので、大人になってもこれらを食べ残したり、粗末に扱ったりはできません。野菜ほど強くはないですが、朝顔やひまわりを育てたことも記憶に残りやすいです。

家庭菜園に並んで、昆虫やザリガニ、カエル、金魚の飼育も絵日記によく登場します。昆虫なら幼虫から、ザリガニは卵を生ませてからもう一度、カエルなら卵やオタマジャクシから育てた方が強力に記憶に残るようです。昆虫、ザリガニ、カエルは当然に男の子の絵日記だと思いますよね。でも、決してそうではないのです。男の子は昆虫が好きなので目立ちますが、教室で「ザリガニを飼っている人はいますか?」と聞くと、クラスによっては女の子だけだったりもします。カエルも同じです。これは女児が親にザリガニやカエルをおねだりをして飼っているのではなく、幼い頃に昆虫博士だったり、ザリガニ博士だった父親が愛娘の情操教育のために一緒に育てているのでしょう。形態が変化する過程や死は大きなインパクトを与えます。

比較的に身近なものでは「料理」があります。お皿を並べたり、野菜を切ったりのお手伝いも絵日記に登場しますが、より強く記憶残るのは、お手伝いではなく自分で完成させたことです。子供ではなくお母さんがお手伝いをするのです。やっていることは同じようですが、「お母さんの料理のお手伝いをお願いね」と「お料理をお願いね。お母さんも手伝うから」では絵日記での感動も大きく違ってきます。お手伝いをした記憶は消えてしまっても、自分で作った料理の記憶は消えることはないでしょう。

たくさんの絵日記を見てきて、最も子供たちにインパクトを与えたものはキャンプです。テント、シュラフ、ランタン、飯ごう、バーベキューなど、見るもの感じるものの全てが強烈に記憶に残っているようです。引率付きのイベントに参加するだけでも数多くの感動体験ができますが、できれば父親がテントを張ったり、魚を釣って焼いたり、虫を捕まえた方が、偉大な父親として記憶に残るに違いありません。
私の父親はアウトドアよりも読書やクラシック鑑賞が趣味だったので、旅行には連れて行ってくれたけれど、一緒に何かをしたという記憶はありません。

私の小学校時代に、今ではプロの将棋界で活躍している幼馴染みが隣家に住んでいました。彼の父親は大学教授だったのですが、何よりもアウトドアが大好きで、私も一緒に丹沢山系の川へ泳ぎに連れて行ってくれたり、ハイキングや登山にも連れて行ってくれました。川で溺れずに泳ぐための心得は厳しく教わりました。テントの張り方、飯ごう炊飯の方法、ナイフの使い方、魚の釣り方、ザイルの結び方、雷鳴が聞こえたときに進むか戻るかの状況判断など、実の息子と一緒に叩き込まれました。

そのためか、私は彼の父親を今でも心から一人の男として尊敬しています。教えているときの真剣な表情や叱っているときの顔も忘れられません。大自然の中で頼れるのは彼の父親しかいないので、一挙手一投足を真剣に見つめていたのでしょう。今でも目をつぶるとその時の情景が浮かびます。実際には数えるくらいしか一緒に出かけなかった幼馴染みの父親ですが、実の父親の面影よりも鮮明に記憶に残っているのです。

話はまた脱線したようなので絵日記に戻しますが、とにかくキャンプはお勧めです。私は動くとすぐに息が切れる年齢なので、4歳の小僧と遊ぶだけでもヘトヘトです。若くはないので、キャンプへ行くよりも、湯布院の『玉の湯』で、四、五日ゆっくりできたら、これ以上の幸せはないと思っている全く頼りないパパです。しかし、将来は息子をキャンプや山へ連れて行けるように今から少しずつ体を鍛えています。

絵日記の番外編ですが、毎年1人か2人が「地引き網」を体験した絵日記を描いてくるのです。地引き網を体験される皆さんは、一体どこでそのような情報を仕入れてくるのでしょうか。驚くばかりです。

※過去記事の再掲載です

エスポワール らくらくさん