小学校受験はエスポワール

 

難問・奇問・珍問

この時期になると落ち着きをなくし、不安に駆られたお顔をされた年長さんのお母様がとても目立つようになります。今は学校説明会のシーズンなので、恐らく志望校を目の当たりにして「頑張るぞ」という闘志と「高嶺の花かも」という不安が交錯しているのでしょう。そして、学校説明会後は漠然とした受験が現実のものとして変わっていくのです。

保育園のお母様はお仕事をすることによって多少は気が紛れますが、幼稚園のお母様は長い時間お子様と一緒なので、見るもの聞くもの全てに不安を感じます。あそこの学校はコネがないと厳しいとか、高学歴でないと駄目だとか、その類の噂を聞くたびに不安になります。この時期は特に噂が飛び交いやすくなります。何故なら、最も不安に駆られたお母様が自分のストレスのはけ口として噂を流し、他人をも巻き込むからです。

7月の中旬から8月の下旬までは夏休みなので、幼稚園が休みになり他のお母様と顔を合わせることがなくなったり、上の子供が毎日家にいたり、夏休みの帰省や旅行があったりと、得体の知れない不安からは解消さますので、もう暫くの辛抱です。その次に辛く苦しくなるのは入試2ヶ月前の9月からです。

さて、話題は変わり、エスポワールの通信制では毎日、多くのお母様からたくさんの質問を頂きます。「お正月に使うもので、門松やは当然ですが、羽根突きや羽子板も知っていることが常識でしょうか」と聞かれることもあります。

エスポワールの講師陣、いや、日本中の幼児教室では「それらは“常識”ですね」と回答します。更に「お正月では他に鏡餅や破魔矢も過去問に出ました」と答えることでしょう。

質問したお母様はすぐにインターネットで鏡餅や破魔矢を検索して、それらの写真を印刷して子供に見せ、覚えさせたに違いありません。

朝顔のツルは左巻きが“常識”だと知ったお母様は、我が子に呪文のように「アサガオは左巻き、アサガオは左巻き、・・・・」と教えます。小学校受験ではアサガオのツルの巻き方も問われることがあるのです。

この世界には余りにも高度な“常識”が多いので、受験初心者の保護者は「小学校受験はたいそう難しそうだな。我が家も気合いを入れないと受からないぞ」となります。

私はこれら受験問題の多くを“非常識”と考えています。受験でなければ、私は5歳児に「門松」なんかは知らなくて構わないと考えています。普通に生活をしている一般的な5歳児は「門松」を知りません。お正月にその存在に興味を持って親に尋ねて教えてもらったとしても、その翌日には忘れていることでしょう。これが普通です。しかし、小学校受験では入試まで「門松」を覚えていなければなりません。大人は誰もが門松を知っています。それは、普通に日常生活を行っていれば誰もがいつかは覚えてしまうことだからです。

この世に生を受けてたった5年のチビっ子が、いま覚えて本当に役に立つのか解らない「門松」を暗記しなければいけないのが小学校受験です。鏡餅や破魔矢なんぞ、普通なら小学校の低学年でも知らないものも覚えさせられるのです。更に10歳でも解けるかどうか怪しい、容積と浮力や磁力、朝顔のツルの巻き方なども試験に出たりします。賢くない中学生にも難しい2連の滑車や3つのシーソーの重さ比べなども5歳児の入試には顔を出したりします。

中学生だけではありません。大人でも難しい問題も平気で出ます。メロン、スイカ、イチゴを果物ではなく野菜に分類できますか。クリスマスに使うヒバやヒムロスギで編んだ飾り付けの輪っかを何と言いますか。ひな祭りは桃の節句、では鯉のぼりを揚げるのは何の節句ですか。百合はいつの季節の花ですか。(答:クリスマスリース、端午の節句、夏)

まともな日本語を話すようになって2年しか経っていない5歳児には酷な問題がたくさんあります。受験を経験していない小学生に同じ問題を出したら、きっと落第点でしょう。何しろ、就学前に11個の飴を3人で分けたら一人何個ずつで、何個余るのかを知っていなければなりません。勿論、就学前なので割り算を使わずにです。

5歳児現在で知らなくて一向に構わない膨大な無駄な知識を小さな脳で精一杯に覚えるのが小学校受験です。本来は算数や理科は小学校で習えばよいのです。お正月用品はわざわざ勉強するのではなく、興味を持った時点で知れば構わないのです。

エスポワールではアネックスという名前の夏期限定講習会を開催する予定です。先月に120名を募集しましたが瞬時に定員を超えてしまいました。私が考案した入試問題をフラッシュカードを用いて紙芝居形式で楽しく覚えるという日本初のスタイルが好評だったようです。

思い起こせば、高校1年生1学期の中間テスト対策で単語カードを使い100個超の元素記号を暗記した覚えがあります。Sc=スカンジウム、Pm=ポロメシウム、Pa=プロタクティニウムなどなど。偉そうに難しそうな3つを紹介しましたが、実は元素記号表から記憶の片隅にもない元素記号を選んで書き写しただけです。水素、炭素、窒素、酸素やサプリメントで有名なカルシウム、鉄、亜鉛などは覚えていても、他の大多数はあれだけ頑張って覚えたのに関わらず、試験が過ぎたらすっかり忘れてしまいました。

アネックスという名の夏期限定講習会では入試問題の中から約100の事象を暗記しますが、私は子供たちに、入試が終わったらこれら全てのことをすっかり忘れてしまって欲しいと願っています。入試問題の大多数は小学校入学後に改めて習うものか、もしくは日常生活の中で自然と知りうるものばかりです。大人の都合で覚えさせられたものは忘れやすいですが、自らが興味を持って知り得たものは忘れにくいものです。

入試問題の中には「オイ、オイ」と思うような、幼児には尋常ではない、悪い言い方をすれば「狂った」問題が見受けられます。例え尋常でない問題でも幼児教室は対策を講じます。その過去問題を知った他の小学校の入試担当者も同じような問題を作ります。幾つかの小学校で同じ類の問題が出揃うと、それは既に難問、奇問、珍問ではなく、一般常識問題とされてしまうのです。

小学校入試問題は要領よくパッパッパッと覚えて、サッサッサッと忘れるに限ります。内容は幼児にとって極めて高度なので本当に興味を持ったときに改めて向き合えばよいのです。

幼児期の出来事は何れ忘れます。私には5歳児の時の記憶は殆どありません。大好きだったスミレ組の先生のお顔やお名前も思い出せません。皆さんのお子様も今現在の出来事の殆どを忘れることでしょう。

但し、泣きながら覚えさせられたり、頭を小突かれながら反省させられたり、成績の良いお友達と比べられたりすると、それらはトラウマとなり反抗期を迎えるときに親に跳ね返ってきます。

次回は精神年齢の高いお子様に共通している母親像を私の主観に基づいて紹介する予定です。

(メルマガ担当:トモヤ)



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